–本稿は世界コスプレサミット2016日本代表「万鯉子(@marigon1013 )」からの寄稿です–
先日、残念な事件がありました。稽古中に役者さんに模造刀が刺さって亡くなられてしまいました。ご冥福をお祈りいたします。
これと同じような事件はイベントでも起こりうる可能性が十分に考えられます。
本来楽しいはずの趣味の遊びの中でこういったケガや、ましてや死亡事故にまでつながってしまったら本当に悲しい限りです。
起こる前に注意するべきだと思いましたので、一筆書くことにいたしました。
他人事だと思わずにお読みいただけますと幸いです。
まず、武器等の安全な、人を攻撃しない持ち歩き方法ですが、
- 袋に入れて持ち歩く
- 手から離さない(投げない)
- 鋭いところを地面に向ける
- 傷つける部分があるものだということを自分で理解し、自分も周りにいる人にも配慮する。
があげられます。次に実際に模造刀の扱い方を考えてみましょう。
- 移動中はさやから抜かない。切っ先は下にして歩くか、腰に帯刀(※1)する。
さやがない場合は袋に包んだりしましょう。長い槍や鋭利な部分が多い剣の場合は自分の視野の範囲に危険な部分が来るように持ち、すれ違う時などに人に当たらないように気を付けましょう。
- 抜くときはゆっくり抜く。切っ先を人がいるところに向けない。
ついついかっこよく抜きたくなる気持ちはわかりますが、ここは戦場ではありません。抜いた瞬間に敵は襲ってきませんし、そもそも傷つけていいものはありません。
ゆっくり抜き、切っ先は必ず自分の視野の範囲に来るように持ってください。
必要がない時は地面に切っ先は向けましょう。
- ポージングの時も、ゆっくり剣を動かす。基本的に人がいる方向に切っ先を向けない。
殺陣の稽古の大半はポーズとポーズの間のムーブメントをどうやってつなぎ、安全性を考慮することにあります。なので、お稽古をしていない方が教えてもらわないですぐにできることではありません。独学でやった場合も危ない可能性があります。
ゆっくり動かせば当たっても軽傷以下で済みます。
また、バランスを崩して倒れても相手に切っ先が刺さらないように、カメラマンや相手の体より少し外側に切っ先を向けましょう。遠近法のおかげでそんなに別のところを切っているようには見えません。

- 使わないときは鞘にしまっておく。
撮影などしないときは出しっぱなしはよくありません。もし出しっぱなしのところで誰かが転んでしまったら、大けが、それ以上のことある可能性があると考えましょう。
- 絶対安全!と信じないこと。
絶対安全はありません。予想もしない事故が起こります。たまたま剣がすっぽ抜けてしまったり、壊れて破片が飛んで行ったり。危ないかもしれないから気を付けようと思って動いてください。この「人を自分を傷つけないように配慮する、気を付ける」が一番大事です。絶対大丈夫だと思っていると気を付けることはできないので、「絶対大丈夫じゃない」と思うぐらいがいいかもしれません。
※1帯刀する際は前後に大きく刀の鞘などが飛び出ます。振り向いたり、方向転換する際に壁や柱、置いてあるもの、人と十分な距離を取って方向転換を行いましょう。
※パフォーマンスで剣を使いたい人は・・・。
まず、どこかに習いに行きましょう。
「安全第一」とおっしゃる先生がいるところがいいと思います。
安全性を気にしていても、殺陣は人を傷つけるための演技ですし、剣はほとんどの場合、人を害するための道具です。「危ない」ということが根底にあります。
技術を磨きながら、一緒にやるメンバーと信頼関係を作っていきましょう。
信頼関係がないと殺陣は非常に危険度が上がります。信頼関係があってもうまく合わずに軽いけがを負わせてしまうことがあります。
こういったことをちゃんとやらずに殺陣をやった場合、事故が発生します。それは演者同士の可能性もありますが、折れた剣が飛んで観客を傷つけてしまう可能性もあるということを覚えておきましょう。
剣以外で危ないものは一杯あります。鞄だって、扇だって、ボールだって。攻撃しようと思ったらできます。危ないです。扇の骨で目を攻撃すれば、失明させる可能性もあります。鞄だって、振り回せば立派な凶器になります。「自分は大丈夫」なんてものはどこにもありません。また、絶対大丈夫なもの、絶対壊れないものもありません。
できるだけ自分の周りに注意を向けてください。できれば、自分の行動を想像してください。「こう動いたらどうなるかな?」と。危ないと思う場合はやらないか、周りの人に言って場所を空けてもらいましょう。「危ないのでちょっと離れてもらっていいですか?」とかでいいと思います。想像できないときは人が多くいる場所ではやめておきましょう。人がいない場所でやることをお勧めします。
怖いことばかりを書きましたが、基本的に「ゆっくり動かして、人がいる方向に切っ先を向けない、自分の視界の中に切っ先を収める」ことができていれば、ケガをする・させる可能性はグッと減ります。気を付けながら扱えば、怖いものでもありません。楽しむためにも、自分を含む周りに注意を向けて、動いてください。
楽しいコスプレをちょっとの注意でさらに楽しくしましょう。